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BLUE ODYSSEY

BLUE ODYSSEY

『アリスの大豪邸』第3部 ACT.120

ACT.120 まったくフツー 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 

アリスたちが見えなくなると急におじいさんは悪態をつきました。

おじいさん「ケッ!カモめが!買って行けよ!ポンコツを!
ブツブツ!

キーーーーーー!くそう!!!キイーーーーー!!」






アリスたちは歩きました。
モグモグは文句も言わずにグースカ寝ているニセアリスを背負い続けていました。




ニセアリス「ぐおおおおおおおおおお!!!




ぐああああああああああ!!!!





由美「……………………。」

モグモグも由美も疲れて来ました。
今日はまだお屋敷に着いてさえいないのに。

ウサギ「最初から難しいことはわかっていました。」

アリス「でもあきらめずに探しましょう!」

アリスもミルキーを背負っていますので疲れます。
中古車屋巡りにももうすでにかなりの距離を歩いていました。

そんな中、目の前には別の中古車屋がありました。


***************************************************************************



『ウソつき中古車屋』



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看板にはそう書かれていました。

アリス「……………………。」

ウサギ「……………………。」

今度のお店の車の品ぞろえはいったて”フツー”でした。まったくフツーでした。
特に綺麗でもなく、
特に汚くもなく、
品ぞろえが特に変わっているワケでもなく。
特別な車が置いているワケでもなく。
何の特徴もない平凡な品ぞろえでした。

ウサギ「まあ、入ってみましょうか?」

入るなり、一番奥の事務所が扉が開きました。
そこから一匹の”キツネ”が出て来ました。
そのキツネのしっぽはなんと9本もありました。
キツネの表情はなんだかズルそうな感じがしました。その目はつり上がっていました。
そしてゴマをするような手付きでアリスたちに近づいて来ました。

キツネ「きひひひひひひひひひ!きひひひひひひひひひ!
やあ、お客さん!
”安くて良い車”をお探しですか?」

ウサギ「ええ、その通りなんです。予算が少ないもので。
”安くて良い車”を探しているんです。」

キツネ「ならここには良いのがありますよ。お安いですよ。」

キツネは一台の車を見せてきました。
それはまったく”フツー”の車でした。





ACT.121 キツネの手口 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 


ウサギさんはその”フツー”の車を見ました。

キツネ「どうですか?良い車ですよ!お安くしておきます!」

ウサギ「おいくらですか?」

キツネ「まあ、すごく安いですよ。たったの”200万ゴールド”です!!」

ウサギ「はあ?」

この車が「普通の車種」で、しかも「古い車」だと言う事はウサギさんにもわかっていました。人気車種ではないフツーの車なので、だいたい20万ゴールドの値段でも売られている事があります。もちろん走った距離にもよりますが。

ウサギ「200万ゴールドですって?
ではこの車はまったく走っていないのですか?
新車でも売り出し価格は180万ゴールドぐらいだったでしょう?
”走行距離”はおいくらですか?」

キツネ「”走行距離”?
さっ、さあ?いくらだったかなあ?」

キツネはとぼけましたのでウサギさんは自分でその車のメーターを見ました。
なんと、15万キロ走っています!!

ウサギ「あのう、これなら20万ゴールドで売られる場合もある車ですよね?」

キツネ「バカなこと言わないでください!あんなポンコツやインチキの中古車販売をしている人たちと同じにされては困ります。
私のところの車はちゃんと”整備”をしているんです。
うちですみずみまで整備してからお客様にお渡ししているんです。
だからその分お金がかかっているのです!
他のお店は整備しますか?いいえ、しません!
なのに高いです!うちは整備します!それなのにたったの”200万ゴールド”という破格の安さでご提供するのです。」

ウサギ「では”整備記録簿”を見せてください。」

ウサギさんはそう言いました。
キツネは少しの間”かたまり”ました。

キツネ「は?”整備記録簿”ですって?
いやあ、それがですね、残念なことに前のオーナーがそれをなくされてしまって、今、この車の整備記録簿はないのです。」

ウサギ「ここで”すみからすみまで”整備したのではないのですか?」

キツネ「いえいえいえ、前のオーナー様がどこかの整備工場で”すみずみまで”整備したのです。」

ウサギ「ではエンジンをかけてください。」

キツネ「うっ!」

キツネはまたかたまりました。
そして携帯電話を取り出しました。別に呼び出し音が鳴ったようには思えませんでした。

キツネ「あーーー!お客様!!お電話ありがとうございます。いつもお世話になっております。
なに?昨日のお車を買いたい?
それがですねえ、今、別のお客様がついていてお話しているんですよ。」

そう言ってキツネはウサギさんの顔を見ました。

キツネ「え?そのお客様が”この車を買うかどうか”ですって?」

キツネは受話器部分を手で押さえました。そしてウサギさんに、

キツネ「この車、お買いになりますか?」

と、聞きました。ウサギさんはきっぱりと

ウサギ「いいえ。」

と答えました。





ACT.122 するとなんとキツネが! 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 


するとなんとキツネは……、

「あっ、買われるようです!」

と、言いました。それでウサギさんはあわてて

ウサギ「え?買いませんよ?!」

と言いました。
キツネはまた電話に戻ります…、

キツネ「まことにすいません、お客様!
こちらのお客様が今”買われる”と申されましたので……、

え?

え?

なんですって?!!

”250万ゴールド出すから売ってくれ”ですって?
いえ、でもですねえ、こちらのお客様が今買われましたので、その価格を提示されましても……。
はあ~、困りました。
ではこちらのお客様に一応聞いて見ますね。」

そしてキツネは受話器のマイクを指で押さえながらウサギさんにこう言いました。

キツネ「あの……、電話のお客様が”250万ゴールドでこの車を買う”と言っておられるのですが……、どうしましょうか?一応そちら様に”優先権”がありますが?」

ウサギ「はあ?なんのお話ですか?
僕は”買わない”と言ってるじゃありませんか?」

するとキツネはまた電話に戻りました。

キツネ「今、こちらのお客様とお話しましたが……、やはり買われるそうです。」

ウサギ「え?”買わない”と言ってるじゃありませんか?!

キツネ「それで大変申し訳ないのですが……。

え?

え?

なになに?

なんですって?!!



”300万ゴールド出すから売ってくれ”ですって?



しかし、もうこちらのお客様が”買う”と申されておりますので……、」

ウサギ「”買わない”と言ってるでしょ?!!

キツネ「わかりました。”300万ゴールド”ですね。
ではその数字をこちらのお客様に言ってみます。」

ウサギ「は?」

キツネ「あのう、この電話先のお客様がこの車を”300万ゴールドで買いたい”と言われているのですが……、
お客様の方に”優先権”がありますので、どうされますか?」

ウサギ「”優先権”もなにも……、
僕は”買わない”と言っているじゃありませんか?!」

するとキツネは電話に戻り大きな声で……、


キツネ「大変申し訳ありません!!
こちらのお客様が”買う”と申されておりますので!

え?

え?

なんですって?

そんな?!


いいんですか?
変更はできませんよ!






”500万ゴールドでこの車を買いたい”ですって?





それはわたしくとしましては大変嬉しいのですが……、
ですがお客様!
さすがに私もこの車に500万ゴールドの価値があるかどうかはわかりませんよ!

え?

え?

なんですって?!!






この車には実は700万ゴールド相当の価値がある?





そーーーーなんですか?!
そんなに”レアな車”だったんですか?
私も知りませんでした。
そうですか、
なら私もこちらのお客様に、
その”500万ゴールドで買いたい”というお話をしてみます!!!」





ACT.123 キツネの一人芝居 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 

ウサギさんはこのキツネには呆れていました。
それにキツネの携帯電話にはランプがないもついていないのです。
どうやら携帯の電源は入っていないようです。
ですからこれは「一人芝居」です。キツネは「一人芝居」を車を買わそうとしているのです。そしてともすれば車の値段もつり上げられるのではないかとこんなことをしているのです。

ウサギさんは道をはさんだ向かい側にも別の「中古車屋」があるのを見つけました。
そしてそこに今のこの車と同じ車が4台ほど売られているのを見ました。
「大衆車」なのでどこにでも売っているようです。
プライスボードには「23万ゴールドから37万ゴールド」のものがかかげられていました。
だいたい値段はこんなもののようです。

ウサギ「……………………。」

ウサギさんはアリスをうながしてこの店から出て行こうとしました。

キツネ「あ?お客さん、どちらへ?
このお車を”買う”と言われたじゃありませんか?
困ります!買っていってもらわないと!
お客さん!」








こうしてアリスたちはそのお店を後にしました。

アリス「むずかしいですね。中古車を探すというのは……、」

ウサギ「そうですね。」

アリス「もうお昼頃です。お食事にしませんか?」

ウサギ「わかりました。それでは食事に向かいましょう!」

こうしてアリスたちはどこか食事の出来る所を探しましたが……、
どれも高くつきそうなので、結局「激安スーパー」に行きました。
そしてたくさんの食品を買い込み、また「道の駅」に向かいました。

そこで空いていた大きなベンチに腰を下ろしました。
お弁当を開けるとそこから良い匂いがあふれました。
その匂いをかいで、起き出して来た者がいました。

ニセアリス「……………………。」

ウサギ「さあ、みなさん、食べましょうか?」

野菜炒めなどのおかずがたっぷり入ったお弁当が広げられていました。

ニセアリス「……………………。






飯だああああああああああああああああああ!!!!!






ニセアリスはそう言うなりお弁当に手を伸ばしました。

ニセアリス「さあ、食うぞ!!!




ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!ガツ!!」




ニセアリスはいつものように大量に食べ始めました。

ウサギ「……………………。」

アリス「……………………。」





ACT.124 中古車市場というのはドロドロしたものだ 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 


ニセアリスは食いあさりました。

アリス「……………………。」

ウサギ「……………………。」

由美「……………………。」


ニセアリス「ウップ、ゲップ!」

ニセアリスはガッツリ食事をしました。
そしてつまようじで口の中をツーツーしました。

ニセアリス「ツーーーーー!ツーーーーー!」

それからおもむろにモグモグを横目で見つめ、

ニセアリス「なにか一品足りないんだよな。」

と、言いました。

モグモグ「ビクッ!」

ニセアリス「”肉気”がないんだよな。
フライドチキンでもあれば満足するんだが……、」

そしてニセアリスはモグモグの背中に片手を置きました。

ポン!

ニセアリス「おんや?こんな所に”肉気”が。」






モグモグ「ピィーー!ピィーー!」






モグモグは逃げました。
アリスはそんなニセアリスに注意しました。

アリス「モグモグにそんなことしないでいだたけますか?」

ニセアリス「でもさ、これは”食料”だろ?それしか役に立たないジャン!」

アリス「モグモグは”食料”ではありません。それにモグモグはいつも荷物を運んでくれます。役に立ちます。」

ニセアリス「チェ!自動車でも買おう!
そうすれば、ソイツは”お払い箱”になって晴れて”食料”となるワケだ!」

アリス「”自動車”という物はなかなか手に入る物ではありません。」

ウサギ「今日午前中良い中古車を探しましたが、けっきょく良いのはありませんでした。」

それを聞いてニセアリスの目がキラリと光りました。

ニセアリス「まあ、”見る目のない者”には中古車を探す事はできん!」

それを聞いてアリスは怒りました。

アリス「私たちはとても苦労して中古車を探していたんですよ!」

ニセアリス「中古車市場というのはドロドロしたものだということを知らんのか?
チミたちのような者には買うのは無理だな。」





ACT.125 ニセアリス先生登場! 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 


アリス「まあ、そんな言い方って!
では”ニセアリスさんには中古車を買う事ができる”と言うのですか?」

ニセアリス「もちろん!!」

ニセアリスはパソコンのジャンク品を買う事にかけては実はすごい実力を持っていました。しかし中古車購入に関してはどうでしょうか?

ニセアリス「アタシに任せろ!!
そういうことはこのアタシでないとできない!」

ウサギ「……………………。」

確かにジャンクパソコンの時はプロの仲買人であるウサギさん顔負けの”目”を持っていました。
それでアリスたちは一応ニセアリスについて行く事にしました。

ニセアリス「まずは”店選び”からスタートする!!」

ニセアリスは得意気にそう言いました。

アリス「……………………。」







近くにあった中古車屋の敷地の前に着きました。
そこは酷く汚れた車がたくさん置いてあるお店でした。
敷地の中には今にも壊れそうで汚れている車ばかりでした。洗車もされていませんでした。

ウサギ「ウップ!実に汚いお店ですね。」

ニセアリス「こういう店でも一応ひととおり展示車両は見ておく。
”良い中古車”というものは”良い中古車屋”に置いてあるとは限らない。
こういう薄汚れた店にも”良い中古車”が置いてあることがある。」

ウサギ「そうですか?」

ニセアリス「もちろん”希”にだが。
だが、たいていは”汚い店”には”良い車”は置いていない。

それにもし万が一”良い中古車”が置いてあっても、客に対して”高く売ろう”と思っている店では安く買えることはない。
そういう”客をカモとしか見てないお店”で買うのは止めることだ。」

ウサギ「……………………。」

ニセアリス「ちょうどいい。この店を使ってひとつ”実験”してみよう!」

ウサギ「”実験”?」

ニセアリスはそばに転がっていた大きな石を両手で持ち上げました。

ニセアリス「うんしぃ!」

ウサギ「いったい何を?」

ニセアリスはその石を中古車屋の敷地の中に投げ込みました。





ドコン!





するとすぐにお店の一番にある事務所らしい小さな建物の扉が「ギーーーーー」と音を立てて開きました。
そこから一人のおじいさんが出て来ました。どうやら「お店の人」のようです。
そしてキョロキョロと店の中を見回しました。
しかしニセアリスたちはすでに物陰に隠れていましたのでおじいさんからは見えません。






キョロキョロキョロキョロ!





おじいさんはひっしでお客の姿を探していました。

おじいさん「あれえ?客はどこだ?
たしかに誰か入って来たような気がしたが?
客!客!
どこだ?!ええい!客はどこだ?!」





ACT.126 タヌキ! 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 


ニセアリス「見ろ!
あのひっしな姿を!ちまなこになって客を探している!」




おじいさん「客!客!
どこだ?どこだ?

確かに客が”アミ”にかかったように思えたんだが?

カモ!カモ!
ええい!”カモ”はどこだ?!」







ニセアリス「こういう店はやめる事だ!」

ニセアリスはそこを出て、さっさと次のお店を目指しました。

アリス「……………………。」

ウサギ「……………………。」







別のお店に着きました。
見るからに”普通”といった感じの”店構え”です。
そこでは”タヌキ”が店員をしていました。

タヌキ「さあ、いらっしゃい!いらっしゃい!”良い車”あるよ!」

ニセアリスはおもむろにそのお店に入りました。
アリスたちもついていきました。

ニセアリス「……………………。」

タヌキ「さあ、この店はお安い車ばかりです!
この車なんてどうでしょうか?」

タヌキはまったく平凡この上もない車を出して来ました。
ですが……、

タヌキ「こちらのお車は非常に珍しい”レア物”です。
めったに出ません。
1989年、この車は”リミテッドエディション”として発売されました。記念モデルです。世界限定25台です。実に貴重なモデルです。」

するとニセアリスは、

ニセアリス「ほう、これはよく見かけるモデルだな。」

と、言いました。
タヌキは焦った表情を浮かべました。

タヌキ「こっ、これは”特別仕様”なんです!!!他のモデルとは違います!」

すると店の奥からなにやら洋服を着込んだ人物が数人出てきました。
スキー帽を頭からずっぽりとかぶり、目には大きなサングラスをしていました。
くちもとにはマフラーをしており、顔はわかりませんでした。
それが車の方を取り囲んで話を始めました。

謎の人物A「あーーー、これかこれか!
うわさの”リミテッドエディション”は!
通常のモデルとよく似ているが、実は違うんだよね!」





ACT.127 タヌキの芝居 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 


ですが、ニセアリスは、

ニセアリス「このような”リミテッドエディションモデル”が発売されたという話は聞かない!」

キッパリとそう言いました。

謎の人物A「ゴホッ!ゴホッ!」

謎の人物はむせかえりました。そして……、

謎の人物B「あーーー!
わかった!これは”極秘のうちに出されたモデル”だよ!
超貴重品だよ!
関係者だけに売られた特別な車だ!」

謎の人物A「あーーー、そうだ!そうだ!
”幻のモデル”だよ!
すごいなあ!こんなところでお目にかかれるとは!!」

ニセアリスはお店の出口を指さしてウサギさんに言いました。

ニセアリス「帰るぞ!
こんな”ただのノーマル車”には興味ない!」

ウサギ「へ?」

謎の人物たち「ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴホッ!」

謎の人物たちはたいへんむせかえりました。

謎の人物A「すっ、すばらしいモデルだ!
この”幻のモデル”は実はシャーシナンバーでないと判別できないんだよな!
56883989!
これは”めったに出ないモデル”と読める!」

ニセアリス「読めるか!」

謎の人物B「本当だ!
間違いない!幻の名車だ!
さすがだなこのお店は!こんな貴重なモデルが置いてあるとは!
でもいったいいくらだろう?」

謎の人物C「買う気なのか?!
この幻の名車を!
とても買える値段じゃないぞ!
きっと1000万ゴールドはくだらない!」


謎の人物Bはタヌキに聞きました。

謎の人物B「すいません、この車はいったいいくらですか?」

タヌキ「うちの店はどのお車も特別安く提供しています。
たとえそれが”希少モデル”であっても!」

謎の人物B「ではおいくらですか?」

タヌキ「230万ゴールドです!!」

謎の人物A「おお!すごい!
こんな1000万ゴールドをくだらない価値の車がたった”230万ゴールド”だって?
それはすごい!!」

謎の人物B「本当だ!私が買おう!」

謎の人物A「いいや、待て!私が最初に見つけたんだ!
私が買う!」

謎の人物B「いや!私が買う!
こんな車が230万ゴールドで買えるなど他では考えられんからな!」

謎の人物A「いいや、私が買うんだ!」

謎の人物B「いいや!私だ!」

謎の人物C「ケンカはやめろ!そんなことしている間に他の人に買われてしまったらどうする?!」

謎の人物たちはそろってニセアリスたちを見ました。





ACT.128 黄色いフォルクスワーゲン 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 


ニセアリスは「プッ!」と軽く吹き出し、それからクルリと身体の向きを変え、店の出口へと向かいました。

ニセアリス「それはただの”ノーマルモデル”だ。他の店で程度の良いのが23万ゴールドで手に入る!」

タヌキ「ギクッ!ギクッ!ギクッ!ギクッ!」

タヌキはビビっていました。
しかしすぐに”開き直り”ました!」

タヌキ「お客さん、待ってください!今ならこのリミテッドエディションを
50万引きの180万ゴールドでお譲りします!!」

ニセアリスは振り返らずに「そっちの”タヌキ3匹”にでも売ってやりな!」と言いました。

謎の人物たちは額に汗をかいていました。







こうしてアリスたちはお店から出ました。

アリス「はあ~~~~。なかなか良いのは見つかりませんねえ。」

ウサギ「そうですねえ。」


アリスたちは別のお店目指して歩き始めました。

すると不意にニセアリスの足が止まりました。
そして何かを見つめました。その視線の先には中古車屋があり、その中に黄色い車がありました。

ウサギ「どうしました?」

ニセアリスはその車をじっと見つめていました。
その後おもむろに、

ニセアリス「入るぞ!」

と言いました。
頭上にある看板を見ますと、そのお店の名前は、


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『ジャワジャワ族中古自動車販売・修理店』




***************************************************************************



と、なっていました。

アリス「”ジャワジャワ族”?」

ウサギ「さあ?”ジャワジャワ族”なんて聞いた事がありませんねえ。」

ニセアリスはお店の入り口から入りました。
みんなもその後に続きました。

ニセアリスはウサギさんに、

ニセアリス「見ろ!店の者がいる!」

と、言いました。
ウサギさんは言われた方向を見てみましたが、お店の人の姿は見当たりません。しかしよくよく見ますと車の下に潜り込んでいました。車を整備しているようです。足だけが車の下から出ていました。

ニセアリス「車を自ら整備している。こういう店は良い!」





ニセアリスは目指す車の方に行きました。

ウサギ「これは”フォルクスワーゲン”ですね!」

ニセアリス「そうだ。これも”大衆車”だ。
それに今では古い車だ。
だが、この車両は程度が良いようだ。」

アリス「確かに大変綺麗ですが。」

ニセアリス「中古車というものは”ピシッ!”とした印象を与える物が程度が良い場合が多い!」

確かにその車はしっかりした印象でした。
そして室内も綺麗でした。

ウサギ「白と黄色の内装ですね。
これは明るい雰囲気で良いですね。乗っていると楽しくなりそうです。」

ニセアリス「フム!店の者を呼べ!エンジンをかけさせろ!」





ウサギさんに呼ばれてお店の人がやって来ました。
整備用の”つなぎ”を着ていましたが、その上に頭からボロボロのローブをまとっていました。
顔には大きなサングラスとマスクをしていました。そのため顔はまったくわかりません。
”つなぎ”は油で汚れており、いつも整備している様子がうかがえました。

お店の人「いらっしゃいませーー!」

ニセアリス「この車のエンジンをかけてくれ!」

お店の人「それはいいのですが……、

この車、程度は大変良いです。
値段も大変安いです。
ですがひとつ”問題”が……、」

ニセアリス「なんだ?その”問題”って?」

お店の人「うちとしても安く出すかわりに”ノークレーム・ノーリターン”を守って頂けるお客様に売りたいです。整備はもう済んでますし、故障箇所も見当たりません。
このまま長く乗って頂けるでしょう。
ただひとつ”問題”が……、」

ウサギ「なんですか?その“問題”とは?」

お店の人「値段は40万ゴールドです!」

ウサギ「うう、少しお高いですね。
20万ゴールドでも売られている事があると思いますが。」

するとニセアリスが、

ニセアリス「”良い車”とは高い物だ。
程度が良くて綺麗な車はすぐに売れてしまうからな。」

ウサギ「でも”問題”ってなんです?」

するとお店の人は、

お店の人「実はこの車……、

”生きている”んです!」

ウサギ「は?”生きている”と言いますと?」





ACT.129 こいつは程度が良い! 『アリスの大豪邸』 第3部 黄色いワーゲン編 

お店の人「人形などに生命が宿る事がありますが、それと同じでこの車にも”生命”がやどっています。大変珍しい事ですが。」

ニセアリス「”生命の宿った人形”など大してめずらしくもない!」

ニセアリスはアリスが背中におんぶしているミルキーの洋服の襟首を持ってつまみ上げました。

ミルキー「スーーーー。スーーーー。」

ミルキーはまだぐっすりと眠っていました。

お店の人「……………………。
ではエンジンをかけてみますか?」

ニセアリス「うむ、頼む。」





ブルンブルン!ブルンブルン!





すぐにエンジンがかかりました。






ババババババババババババ!





ニセアリス「うひょーーー!良い音!
コイツは”上物”に違い無い!」

お店の人「走行距離1万キロのシロモノです。
めったに出ません。
”事故車”でもないですし、程度は最高です。掘り出し物ですよ!」

ニセアリス「これで”40万ゴールド”なら安い!
安さにつられて走行距離のいっている物を買うのは危険だ。
それは故障を起こしたりすることもある。
それに後々多額の整備費用がかかる。
こういった上物を買う方が結局は安上がりで”得”なのだ!」

ウサギ「じゃあ、この自動車に決めて良いんですね?」

ニセアリス「もちろんだ!アタシの目に狂いはない!」







ババババババババババババ!







ウサギさんはお店の人の向かって、

ウサギ「ではこの自動車を買います……、」

するとその時、自動車のフロントウインドウに「目」が映りました。





パチッ!





ウサギ「は?フロントウインドウに”目”が?」

フォルクスワーゲンル「オイラ、自動車のフォルクスワーゲン!!」

なんと自動車が喋りました。
アリスたちは驚きました。

フォルクスワーゲンは周りを見渡し、さっそくアリスの姿を見つけました。

フォルクスワーゲン「おお!これはなんとお美しい方だ!
初めまして!オイラ、自動車の”フォルクスワーゲン”と申します!」

アリス「はっ、はあ……、」

ニセアリス「それはさっき言っただろ?」

フォルクスワーゲン「これからもよろしくお願いいたします!
こんなお綺麗な方を乗せることができるなんて、オイラ幸せ者だなあ。」

フォルクスワーゲンは次にウサギさんの姿を見つけました。

フォルクスワーゲン「これはこれは!アナタ様が今度オイラの”オーナー”になられた方ですね。以後、おみしりおきを!
行き先を言われればオイラどんな所へでもひとっ飛びで向かいます!」

ウサギ「はあ……、まっ、まあ、よろしく。」

フォルクスワーゲンは次に由美の姿を見つけました。

フォルクスワーゲン「おお!こちらもお綺麗な方だ!
こんな綺麗な方を2人も乗せることが出来るとは!
オイラつくづく幸せな星の下に生まれついたんだなあ!」

由美「……………………。」

目の前にはさっきからニセアリスがいました。
ニセアリスは腰に手を当てて怒っている感じでした。

ニセアリス「”一番綺麗な者”が目の前にいるだろう?」

フォルクスワーゲンル「おおっと!これは”女装”されたコスプレイヤーさん!」

ニセアリス「なに?”女装”だと?」







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